大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

名古屋家庭裁判所 昭和63年(少)1622号 決定 1988年6月13日

少年 N・O子(昭47.5.17生)

主文

少年を名古屋保護観察所の保護観察に付する。

理由

(非行事実)

少年は、

1  昭和62年2月8日午前6時ころ、名古屋市○区○○町×丁目××番地所在の○○荘北側自転車置場において、A子所有にかかる自転車1台(時価約2万円相当)を窃取し

2  同年9月25日午後7時55分ころ、名古屋市○区○○町××番××号先路上において興奮、幻覚又は麻酔の作用を有する劇物であるトルエンを含有するシンナーをみだりに吸入し

たものである。

なお、少年については、昭和63年少第2730号ぐ犯保護事件も係属しており、その概要は、「少年は、昭和62年9月ころからシンナー吸引を繰り返しているが、さらに、昭和63年3月30日午後0時ころから午後2時ころにかけて、名古屋市○区○○町×丁目××番地所在の○○マンション屋上においてトルエンの含有の認められる緑色液体を吸引し、同月31日午前11時ころから午後0時ころにかけて、同区○○町×番地先路上において右液体を吸引するなど自己の徳性を害する行為をする性癖があり、このまま放置すれば、将来毒物及び劇物取締法違反等の罪を犯す虞がある」というものである。

少年保護事件において送致された犯罪事実とぐ犯事実との間に同一性が認められない場合にも当該犯罪事実が少年のぐ犯性の直接的現実化と認められる場合には、ぐ犯事実は犯罪事実に吸収されるものと解されるところ、本件ぐ犯事実は、上記2の犯罪成立後に発生したものであるが、右犯罪事実をもたらしたぐ犯行状が約半年後も継続していることを示すものであって、その間に質的相違は認められないから、なお、犯罪事実に吸収され、要保護性に関する事実として考慮すれば足りるものというべきである。

したがって、本件ぐ犯事実は非行事実として摘示しないこととする。

(適用法条)

1の事実につき 刑法235条

2の事実につき 毒物及び劇物取締法24条の3、3条の3

(主文決定の理由)

少年は、中学3年の夏ころから家出をしては名古屋市○区○の繁華街に遊びに行き、暴力団関係者を含む有職男女と交遊し、シンナーを吸引をするようになり、非行事実2記載の非行を犯したものである。昭和63年3月に中学を卒業した後もシンナー吸引は継続しており、同年4月に喫茶店に就職し、定時制高校に入学もしたが、1週間もしないうちに家出をして○で知り合った暴力団員のところに行ってしまったため、退職・退学のやむなきに至っている。

少年の父母は昭和58年に離婚し、母が親権者となり少年及び2人の兄を引き取ったが、生活に追われて適切な指導をすることができず、少年も母に対して強い反発を示している。

以上のような本件非行の態様、少年の環境等諸般の事情に鑑み、少年については、この際、相当期間保護観察に付して指導監督するのが相当である。

よって、少年法24条1項1号、少年審判規則37条1項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 後藤眞知子)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例